最終更新日: 2025年09月24日
円筒研削盤とは?
この記事の著者
氏名:名倉 惇史(なぐら あつし)
肩書:営業技術部 係長
業界経験:研削加工向け営業技術9年
得意分野:自動車・航空機部品・工具関連の加工への提案
外部発信:アペルザTV 登壇
高精度加工の課題、こう感じていませんか?
- 「真円度が安定しない…」「表面粗さにバラつきが出る…」
- 「不良率を下げたいが、コストアップは避けたい」
- 「特殊材・複雑形状に対応できる加工方法を探している」
円筒研削盤は、これらの悩みに真正面から応える加工機械です。
本記事では、
加工精度・対応素材・加工方法・トラブル対策まで、実務に役立つ情報を網羅的に解説。
初心者からベテラン技術者まで役立つ構成でお届けします。
円筒研削盤は、主に
円柱状のワークの外径や内径を高精度で研削するための工作機械です。
加工の最終工程で用いられることが多く、製品の寸法精度・表面粗さ・真円度を決定づける重要な役割を果たします。
特に自動車部品やベアリングなど、ミクロン単位の精度が求められる部品の加工に欠かせません。
円筒研削盤の基本構造と特徴
円筒研削盤は以下のような主要構成要素で成り立っています。
| 構成要素 |
役割 | 特徴 |
| 砥石台 | 砥石を回転・固定 |
砥石の選定が加工精度に直結
(砥石選定により真円度精度が±0.3μm変動) |
| テーブル | ワークを前後移動 | 直進と回転の微調整が可能 |
| センター | ワークを保持 |
芯出し精度に大きく影響
(芯出し精度が最終加工精度の70%を決定) |
| 主軸台・尾座 | ワーク両端を固定 | 安定した加工を支える |
高精度かつ真円度が求められる加工において、欠かせないのが円筒研削盤
円筒研削盤の主な加工用途
円筒研削盤は、外径が円筒形状を持つ部品を高精度に仕上げるために使用され、以下のような産業・用途で幅広く利用されています。
-
自動車部品(シャフト・ギア・カムなど)
→ エンジンや駆動系部品は、摩耗・振動・騒音の抑制が重要です。
円筒研削盤でミクロン単位の外径精度と真円度を確保することで、
エネルギーロスの低減や騒音の抑制
に繋がります。
-
ベアリング部品
→ ベアリングの内外径は、回転性能・耐久性・静音性に直結します。
円筒研削で高い真円度と表面粗さを実現することにより、
低摩擦で滑らかな回転
を可能にします。
-
油圧部品・空圧部品
→ ピストンロッドやシリンダなどは、わずかな隙間でも漏れや圧力損失が発生するため、
高い真直度と面粗さが求められます。
円筒研削は、これらの厳しい密封性要求にも対応できる手段です。
-
医療用機器部品
→ インプラント部品や医療用シャフトなどでは、寸法精度はもちろん、
表面の微細な仕上げや加工面のクリーン性も重要です。
円筒研削によって、
機能性と衛生性の両立
が可能となります。
-
電子機器部品・精密モーターシャフト
→ 小型・高回転モーターに使われるシャフトは、偏芯や振れが許されません。
円筒研削で同軸度・真円度・面粗さを高水準で確保することで、
振動やノイズの少ない駆動性能
を実現できます。
高精度・低振動・長寿命。これらを実現するために、円筒研削盤が必要です。
センタレス研削・旋盤との違い
円筒研削盤は、しばしばセンタレス研削盤や旋盤と比較されます。それぞれの特徴や得意分野は異なります。以下の表で主な違いを整理します。
| 機械種別 |
特徴 |
適用部品 |
| 円筒研削盤 |
センター保持により、高精度・高同軸度を実現 |
高精度・同軸度が求められる軸部品 |
| センタレス研削盤 |
センターを使わずに加工でき、高速量産に最適。
主に以下2方式:
- スルーフィード研削: ワークが砥石間を通過しながら連続研削される
- インフィード研削: 段付きなど複雑な形状を部分的に研削
|
ベアリング・ピンなどの小型量産品 |
| 旋盤 |
切削による加工で、形状自由度が高く汎用性がある |
多品種少量生産や粗加工に適する |
高精度・同軸度が最優先なら円筒研削盤の選定が正解
円筒研削盤で使われる研削砥石の種類と選び方
円筒研削盤の性能を最大限に発揮するためには、ワークに適した
研削砥石の選定が欠かせません。
砥石は、単に研削するだけでなく、加工精度・加工能率・工具寿命に大きな影響を与えるため、正しい種類と条件を理解しておく必要があります。
円筒研削盤に適した砥石の種類
どの砥石を選べばいいかわからない…そんな声をよく聞きます
円筒研削盤では、被削材や加工条件に応じて砥石の種類を適切に選定することが非常に重要です。
代表的な砥石は以下の通りです:
- レジンボンド砥石: 一般鋼材や樹脂部品など、幅広い素材に対応可能
- ビトリファイドボンド砥石: 熱に強く、ドレス性と切れ味を両立しやすい
- メタルボンド砥石: 超硬など硬質材の高精度加工向け
- ダイヤモンドホイール: 超硬・セラミックス・溶射材などの難削材に最適
- CBNホイール:SKD・SKHなどの高硬度鋼材に最適
ニートレックスではこれらを含む
4万4千種以上の製造実績があり、各種ワークに最適な砥石をご提案可能です。
加工材質・形状別の砥石選定ポイント
砥石の選定は、ワークの材質や形状に応じて異なります。 以下のようなポイントを押さえると、加工効率と精度が両立できます。
- 鋼材(一般鋼・合金鋼)
- ビトリファイドボンド砥石が最適。気孔率が高く、研削熱を逃がしやすい。
- ボンドの弾性率が高いため寸法精度を出しやすい。
- 超硬合金・セラミックス
- レジンボンドダイヤモンドホイールやビトリファイドダイヤモンドホイールを使用。
- 耐摩耗性と切れ味の両立が必要。
- 細径・薄肉ワーク
- 砥石のバランスや切れ味が重要。振動を抑えた砥石選定が求められる。
- 溶射品・硬質皮膜
- 高強度ボンドのビトリファイドダイヤモンドホイールが安定した加工に効果的。
加工現場での課題解決事例
ニートレックスでは、お客様の加工課題に応じて、砥石の構成・設計を個別に調整し、課題解決を実現しています。
以下に、代表的な加工事例をまとめました。
| 加工対象 |
課題 | 解決策・成果 |
| 溶射材 |
目詰まり・摩耗が早く、ドレス頻度が多い |
レジンボンド → ビトリファイドボンドに切り替え、ドレスインターバルが2倍に |
| ゴムロール | 砥石の目詰まりによる焼けが発生 |
破砕性の高いNV砥石を採用し、連続加工が安定 |
| 超硬材 | 加工熱によるワレや欠けが発生 |
CBN砥粒と高強度ボンドの組み合わせで熱を抑制 |
| 自動車部品 | 真円度不良の発生 |
動バランス検査方法を見直すことで真円度を改善 |
このような対応実績は、4万4千種を超える製造実績と、お客様設備や加工目的に応じた完全受注生産体制によって支えられています。
加工現場でのお困りごとがあれば、ニートレックスまでお気軽にご相談ください。
砥石の性能が加工精度に与える影響
砥石の選定は、単に作業効率だけでなく
加工精度や
工具寿命にも直結します。
具体的な影響は以下の通りです。
| 砥石の特性 |
加工精度への影響 |
対応策 |
| 粒度が粗い |
表面粗さが悪化しやすい |
粒度を細かく調整 |
| 結合度が軟らかい |
砥粒脱落が早く、形状保持しにくい |
結合度を硬めに変更 |
| 砥粒硬度が低い |
研削焼けが発生 |
高硬度砥粒を選定 |
砥石の選び方ひとつで、加工精度もコストも大きく変わる
砥石の特性が加工精度に与える影響は大きく、選定ミスは不良品や生産ロスに直結します。
ニートレックスでは、
- 砥石毎に最適なドレス条件・ダイヤサイズを提案
- 加工材質に応じた最適な結合度と粒度を選定
などのサポート体制により、お客様の加工課題の早期解決に貢献しています。
円筒研削盤の研削方法|代表的3種類を解説
円筒研削盤では、ワークの形状や加工目的に応じて
さまざまな研削方法が使い分けられています。
中でも、代表的な方法は「トラバース研削」「プランジ研削」「アンギュラ研削」の3種類。 それぞれの特徴と注意点を理解することで、加工精度や効率を大きく向上させることができます。
トラバース研削の特徴と注意点
トラバース研削は、ワークをテーブル上で往復運動させながら砥石で表面をねじ状に研削する方法です。
一端または両端から砥石を切り込ませ、広い長さのワークを均一に仕上げられるのが特徴です。
広い面積を安定して加工できるのがトラバース研削の魅力
注意点としては以下のポイントがあります。
- 砥石周速度は30m/s以下と比較的低速
- ワークの後続部が砥石に接触しやすく、目詰まりが起こりやすい
- 砥石のアンバランスや振動によって自励振動やスクラッチが発生しやすい
そのため、砥石の
バランス取り・ドレッシングが重要であり、砥石速度を過剰に上げると加工不良につながります。
プランジ研削の特徴と適用例
プランジ研削は、ワークの中央に対して砥石を連続的に切り込ませる加工方法です。
テーブルを動かさず砥石をの字状に送り込むことで、ワークを
短時間で効率的に加工できます。
高能率加工を実現するのがプランジ研削の強み
プランジ研削の特徴は以下の通りです。
- 砥石周速度は一般砥石で45m/s〜60m/s、CBNホイールで60〜200m/sと高速
- ワーク周速度は砥石速度の1/100が目安
- 凹凸のある形状や短尺ワークに適する
適用例としては、自動車のクランクシャフトやカムシャフトの加工が挙げられます。
特に高能率化を求められる現場では、CBNホイールとプランジ研削の組み合わせが多く採用されています。
アンギュラ研削の使い方とポイント
アンギュラ研削は、砥石を傾斜角度をつけて配置し、ワークの端面や肩部の加工を行う方法です。
ワーク軸と砥石軸が交差することで、通常の円筒面だけでなく
端面やテーパー部の加工も同時に行えるのが特徴です。
端面や複雑形状の一発加工に効果を発揮するのがアンギュラ研削
ポイントは以下の通りです。
- ワークの段付き部・端面部の加工が可能
- 1チャックで円筒部と端面を同時加工し、段取り時間を削減
- 砥石軸傾斜による芯合わせ・角度調整が重要
特に
段付きシャフトの加工では、アンギュラ研削の採用が有効です。
円筒研削盤の加工精度を上げるコツ
円筒研削盤で
安定した加工精度を確保するためには、砥石の管理と加工条件の最適化が欠かせません。
特に、仕上がり寸法のバラつきや表面粗さの不良は、砥石状態や設定次第で大きく改善できます。
砥石のドレッシングとメンテナンス
砥石の
ドレッシングは加工精度を維持するために極めて重要です。
砥石表面が目詰まりや摩耗により鈍ると、加工面に焼けや寸法不良が発生します。 ドレッシングのポイントは以下の通りです。
- ドレッシング送り速度は遅すぎず速すぎず適切に調整
- 砥石形状が崩れた場合は成形ドレッサーを使用
- 定期的に砥石バランスを取り、振動を抑制
ドレッシングの頻度と方法が、砥石の寿命と加工精度を左右する
研削条件の最適化方法
加工精度を高めるためには、砥石の条件設定も欠かせません。
| 条件項目 |
最適化のポイント |
注意点 |
| 砥石周速度 |
ワーク材質に応じ設定(プランジは高速) |
過度な高速化で振動・焼けリスク |
| 切り込み量 |
少量ずつ均等に |
大きすぎると砥石負荷増大 |
| 研削液供給 |
十分な流量で冷却 |
不足すると焼け・摩耗促進 |
よくある加工不良と対策法
円筒研削でよく見られる不良と、その対策をまとめました。
| 不良現象 |
原因 |
対策 |
| 研削焼け |
砥石目詰まり |
粒度粗く・結合度軟らかく・砥粒硬度高く |
| 表面粗さ悪化 |
粒度・結合度不適 |
粒度細かく・結合度硬めに |
| 真円度不良 |
砥石切れ味不足 |
結合度軟らかめ・切れ味向上 |
スパークアウトで真円度と表面粗さを向上させる
スパークアウトとは、研削終了間際に砥石の切り込みを止めたまま、ワークと砥石を一定時間接触させ続ける工程です。
切り込み量ゼロの状態での微細研削によって、以下のようなメリットが得られます。
- 加工面に残る微細なビビリやバリの除去
- ワークの真円度や円筒度の補正
- 表面粗さ(Ra値)の安定化
スパークアウト時間の目安は、材質や砥石の種類によって異なりますが、
通常は数秒〜十数秒。
長すぎると砥石が目詰まりしやすく、短すぎると効果が不十分となるため、最適化が重要です。
スパークアウトは、寸法精度だけでなく、最終的な面品位にも大きく寄与します
円筒研削盤導入後によくある課題とその解決策
円筒研削盤を導入しても、
コスト・効率・材質対応の壁に直面することは少なくありません。
ここでは、実際によくある課題とその具体的な解決策をご紹介します。
加工コスト削減のためのアプローチ
加工コスト削減には、以下の3つの観点からアプローチできます。
- 砥石の寿命延長:高強度ボンド砥石の導入でドレスインターバルを延長
- 不良率低減:砥石・条件最適化で研削焼けや寸法不良を削減
- 工具交換頻度の削減:CBNホイールなど高耐久砥石の採用
生産効率アップを実現する工夫
生産性向上には、段取りや加工時間の短縮がポイントです。
- プランジ研削の活用:短時間で効率的な加工
- アンギュラ研削で同時加工:段付き部・端面を一度に加工
- ドレッシングサイクルの最適化:無駄な停止時間を削減
特殊材・難加工材に対応するには
難加工材への対応は、砥石の選定と条件が鍵となります。
ここでは砥石選定のポイントをご紹介します。
- 高強度ボンドを採用(砥粒脱落を抑え要求精度を達成する
- 切れ味重視のボンドを選択し、加工温度を抑制(研削熱を抑えることで研削焼け・割れを抑制する)
- 砥粒に微細な結晶構造のセラミックス砥粒やCBNO砥粒を組み合わせ(切れ味の良い砥粒を選択することで高硬度材に対応)
よくある質問
円筒研削盤は何に使いますか?
Q:円筒研削盤は何に使いますか?
円筒研削盤は、主に
外径や内径が円筒状になっている部品の精密仕上げに使用されます。寸法精度や真円度、表面粗さといった高い加工品質が求められる場合に不可欠な設備です。
- 自動車部品(カムシャフト、クランクシャフト、ギアなど)
- ベアリングやローラーの外径加工
- 医療・航空分野で使用される高精度部品
- 金型や治工具の外周仕上げ
高精度かつ真円度が重要な部品には、円筒研削盤が最適です
ロール研削盤と円筒研削盤の違いは何ですか?
Q:ロール研削盤と円筒研削盤の違いは何ですか?
ロール研削盤は、円筒研削盤の一種であり、特に
大径・長尺のロール部品を対象にした研削盤です。構造や動作原理は共通していますが、対応可能なワークサイズや、求められる加工精度の種類が異なります。
| 項目 |
円筒研削盤 |
ロール研削盤 |
| 対象ワーク |
中小型の精密部品 |
大型・長尺のロール部品 |
| 用途例 |
自動車部品、ベアリング、治工具など |
製紙、鉄鋼、印刷用の圧延ロールやガイドロール |
| 加工精度 |
ミクロン単位の寸法精度・真円度・同軸度 |
面粗さ(Ra)の安定性が重視される |
ロール研削盤では、ワーク形状の特性上、形状精度よりも表面粗さ(面品位)を安定させることが重要です。特に製紙やフィルム製造用ロールでは、滑りや耐摩耗性に関わるため、Ra値のコントロールが精度管理の主な指標となります。
ロール研削盤は表面性状の安定加工に特化した円筒研削盤の仲間
まとめ|円筒研削盤の性能を最大限に引き出すために
円筒研削盤は
高精度加工を実現するための必須設備ですが、その性能を十分に発揮するには「砥石選定」と「加工条件の最適化」が不可欠です。
砥石や条件設定を見直すことで、不良率の低減・加工時間の短縮・コスト削減といった数多くのメリットを得ることができます。
砥石選びと加工条件の見直し
円筒研削盤で安定した加工結果を得るために、砥石の見直しは非常に重要です。 具体的な見直しポイントは以下の通りです。
- ワーク材質に応じた砥石の種類・粒度・結合度を適正に選定
- 難加工材の場合は高強度ボンド・切れ味重視ボンドを積極採用
- 加工条件(砥石周速度・切り込み量・研削液量)を現場状況に応じて調整
これにより、
研削焼け・真円度不良・表面粗さ不良といった課題を未然に防ぐことが可能になります。
砥石と条件見直しは、加工品質とコスト削減の近道
研削盤と砥石の適切な組み合わせが生むメリット
研削盤の性能を引き出すためには、砥石との相性が大きなカギを握ります。
特に、ニートレックスでは、お客様の設備・加工材質・加工精度に応じて
完全オーダーメイドで砥石を提供しているため、次のようなメリットが得られます。
| 最適化のポイント |
得られるメリット |
| 砥石材質・ボンドの選定 |
加工精度安定・砥石寿命向上 |
| 加工条件に応じた設計 |
不良率低下・加工時間短縮 |
| 難削材対応砥石の活用 |
難加工部品の安定量産が可能 |