最終更新日: 2025年07月03日
研削砥石の基礎と種類一覧

この記事の著者
氏名:名倉 惇史(なぐら あつし)
肩書:営業技術部 係長
業界経験:研削加工向け営業技術9年
得意分野:自動車・航空機部品・工具関連の加工への提案
外部発信:アペルザTV 登壇
研削砥石は、鉄鋼や非鉄金属を高精度に仕上げる
最終仕上げ工具です。
砥石は「砥粒・結合剤・気孔」の 3 要素で構成され、切れ味・耐摩耗性・冷却性を左右します。
結合剤は
ビトリファイド(セラミック)・レジノイド(樹脂)の 2 系統が主流です。
「切れ味が落ちてワークが焼ける…」— 砥粒・結合度・気孔バランスの見直しで発熱を抑えられます!
研削砥石の三要素(砥粒・結合・気孔)
- 砥粒:切れ刃。アルミナ系・炭化ケイ素系が代表。
- 結合剤:砥粒を保持。ビトリファイド(セラミック)とレジノイド(樹脂)が主。
- 気孔:切りくず排出と冷却液保持。気孔率が高いほど焼けを抑制。
研削砥石種類早見表
砥粒系 |
適合ワーク |
主なメリット |
アルミナ系 |
炭素鋼・合金鋼 |
汎用性◎ コスト◎ |
炭化ケイ素系 |
非鉄金属・鋳鉄・非金属 |
熱抑制 切れ味◎ |
研削砥石種類別の特徴と用途
アルミナ系砥石の特徴
- 靭性が高く、粗取り〜中仕上げを 1 本でこなしやすい。
- コストを抑えたい量産ラインに最適。
- 結合度は G〜Pを中心に選定。
アルミナ系砥粒のバリエーション
記号 |
化学成分 |
主な特徴 |
代表的な用途 |
A |
褐色アルミナ質 |
硬度が高く汎用性◎ |
鋼材の荒取り・中仕上げ |
WA |
白色アルミナ質 |
純度高く切れ味良好 |
焼入れ鋼の仕上げ |
SA |
解砕型アルミナ質 |
単結晶でWAより靭性◎ |
高硬度金型鋼の高能率研削 |
PA |
Cr 添加アルミナ |
靭性+切れ味両立 |
工具鋼の中仕上げ |
セラミック砥粒 |
微結晶 Al2O3 |
自生作用◎で切れ味長持ち |
高硬度材の高能率ライン加工 |
炭化ケイ素系砥石の特徴
- 非鉄でも目詰まりしにくく、熱伝導性が高い。
- 鋳肌均し・バリ取りに定番。
- 衝撃に弱いためドレッシング条件は控えめに。
炭化ケイ素系砥粒のバリエーション
記号 |
化学成分 |
主な特徴 |
代表的な用途 |
C |
黒色炭化ケイ素 |
硬度高・目詰まりしにくい |
アルミ・銅など非鉄の荒研削 |
GC |
緑色炭化ケイ素 |
純度高く切れ味鋭い |
ガラス・FPR の切断、ステンレス仕上げ |
形状別砥石(平形・カップ形ほか)
- 平形:外径・平面研削の定番。
- カップ形:工具研削・内面取りに有利。
- セグメント:大型定盤の高能率研削。
フレキシブル・オフセット・切断砥石
- フレキシブル砥石:曲面や溶接ビードのバリ取りに追従。
- オフセット砥石:外周+側面を使用でき隅肉研削が容易。
- 薄刃切断砥石:発熱を抑え母材変形を最小化。
研削砥石種類の選定ポイント
加工材質別おすすめ種類
ワーク材質 |
推奨砥石 |
理由 |
炭素鋼・合金鋼 |
アルミナ系 |
汎用性・コスト |
樹脂・非鉄金属 |
炭化ケイ素系 |
目詰まり抑制・熱割れ防止 |
粒度・硬度の選び方
- #36〜#60:粗取り ・#80〜#120:中仕上げ ・#150 以上:仕上げ
- 焼け → 結合度軟らかめ/形状ダレ → 結合度硬め。
表示記号・周速度早見表
周速度(m/s) |
φ150 mm 回転数 |
φ355 mm 回転数 |
20 |
2,550 |
1,080 |
30 |
3,820 |
1,620 |
加工方法・機械別最適研削砥石
平面研削に適した砥石
- アルミナ:金型ベースの荒取り〜仕上げに対応。
- 炭化ケイ素:非鉄プレートの熱割れ抑制。
- 砥石幅は広いと摩耗少・負荷大、狭いと切れ味良・摩耗早。
円筒・内面研削に適した砥石
- アルミナ:シャフト・ピンなど一般鋼材の外径研削。
- ビトリファイドボンドで剛性を確保し寸法精度を向上。
自由研削・切断に適した砥石
- フレキシブル砥石:曲面や溶接ビードのバリ取り。
- オフセット砥石:隅肉・R 面取り。
- 薄刃切断砥石:発熱を抑え母材変形を最小化。
研削砥石のコスト最適化と安全
砥石コストは「購入価格」よりも
寿命・交換頻度・ライン停止時間で大きく変わります。
ここでは寿命を最大化しつつ、作業者の安全も守るための要点をまとめます。
「砥石代は安いのに総コストが高い…」— 寿命と停止時間を見直せば削減余地はまだあります!
砥石寿命を延ばすドレッシング
- ドレッシングは「切れ味の回復」、ツルーイングは「形状修正」を目的とするメンテナンス。
- 一般砥石(アルミナ・炭化ケイ素)はダイヤモンドドレッサでツルーイング+ドレスが基本。
- 切れ味が鈍ったらWA ドレッシングスティックで目立てを行い、温度上昇を防ぐ。
- ドレスのタイミングは火花の色や加工音の変化で判断。
・白っぽい火花:切れ味低下 ・甲高い音:負荷増大
周速度管理と安全チェック
- 周速度は加工効率と安全のトレードオフ。
高すぎると破損リスク、低すぎるとサイクルタイムが増加。
- 最高使用周速度は表示記号の末尾に「33 m/s」などと表示。
機械設定は必ずこの値以下にする。
- 砥石取り付け前にバランスを取り、別途ダイヤルゲージで振れ(偏心)をチェックしてから機械にセット。
- 取り付け後はガードを確実に閉じた状態で無負荷3分間回転し、異音・振動を点検。
保管と交換タイミング
管理項目 |
推奨条件 |
注意点 |
保管環境 |
直射日光を避け、乾燥した場所 |
高湿度での保管は避ける |
積み上げ高さ |
1 m 以下 |
過積載はひずみ・割れの原因 |
交換目安 |
ラベルから出ている部分の 1/3 |
外径低下で周速度が落ちる |
- 保管はころがすな・落とすな・ぶつけるなの 3 原則を徹底。
- レジノイド砥石は水分による吸湿劣化に注意し、防湿包装を維持する。
- 保管期間は各メーカーの保証期間を遵守し、先入先出しを徹底。
- 交換時は外観検査と打音検査でクラックの有無を確認。
よくある質問|研削砥石種類
粒度と仕上がり粗さの関係は?
- #36〜#60:粗取り(Ra 1.6 µm 以上)
- #80〜#120:中仕上げ(Ra 0.4〜0.8 µm)
- #150 以上:仕上げ(Ra 0.2 µm 付近)
ISO9001認証を取得した砥石を選ぶメリットは?
- ロットごとの品質変動が小さく安定供給。
- 不具合時の原因解析・再発防止体制が整備。
最高使用周速度とは何か?
- 砥石が安全に回転できる上限速度(m/s)。
- 表示記号末尾に「33 m/s」などと記載。
- 機械設定は最高使用周速度以下で運用する。
まとめ|研削砥石種類選定の要点
種類別メリット早見表
砥粒系 |
適合ワーク |
長所 |
注意点 |
アルミナ |
炭素鋼・合金鋼 |
汎用性◎ コスト◎ |
高負荷で目詰まり |
炭化ケイ素 |
非鉄金属・鋳鉄 |
熱割れ抑制 切れ味◎ |
衝撃に弱い |
選定フロー再確認
- STEP 1:ワーク材質を確認
─ 鋼 ⇒ アルミナ | 樹脂・非鉄金属 ⇒ 炭化ケイ素。
- STEP 2:精度要求で粒度を決定
─ #36〜60:粗取り #80〜120:中仕上げ #150 以上:仕上げ。
- STEP 3:トラブル別に結合度を調整
─ 焼け → 結合度軟らかめ
─ 形状ダレ → 結合度硬め
─ びびり → 弾性のあるレジノイドボンド
- STEP 4:周速度と機械能力を照合
─ 表示記号末尾の最高使用周速度以下で機械を設定。
- STEP 5:ドレッシング/ツルーイング手順を計画
─ ダイヤモンドドレッサでツルーイング+ドレスが基本。