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最終更新日: 2025年09月17日
研削砥石(Grinding Wheel)とは?

この記事の著者
氏名:名倉 惇史(なぐら あつし)
肩書:営業技術部 係長
業界経験:研削加工向け営業技術9年
得意分野:自動車・航空機部品・工具関連の加工への提案
外部発信:アペルザTV 登壇
研削砥石(Grinding Wheel)は、
砥粒・結合剤・気孔の3要素で構成される工具です。
被削材の表面を微細に削り取り、寸法・形状・面粗さを
高精度に整えるために使われます。
切断や研磨と異なり、
寸法精度と面品位を同時に達成できるのが大きな特徴です。
研削砥石は
JIS規格によって体系的に分類されています。例えば、
・
JIS R6210(ビトリファイド研削といし)
・
JIS R6212(レジノイド研削といし)
・
JIS R6241(最高使用周速度)
これらは砥石の安全・性能・寸法を定義し、安定した加工を支えています。
研削砥石の定義と役割
研削砥石は、
砥粒(切れ刃)を
結合剤(ボンド)で固め、
気孔を設けた工具です。
気孔は切りくずを排出し、冷却流路として機能します。
これにより、加工時の熱や目詰まりを抑えつつ、安定した
寸法・形状精度と
面粗さを実現します。
役割のポイントは以下の通りです。
形状創成(寸法や形状の仕上げ)
面粗さの規格達成(RaやRzの基準)
熱・びびりの抑制(焼けや振動不良の防止)
切断砥石との違い
切断砥石は「材料を切り離す」ことを目的とし、
研削砥石は「寸法精度と面品位を作り込む」ことを目的とします。
この違いは、砥石の
構成・粒度・結合度・使用周速の考え方に表れます。
狙い |
適する砥石 |
特徴 |
材料の分離 |
切断砥石(JIS R6214/15/16) |
高周速・直線送り・切断幅やバリの管理 |
寸法精度・面粗さの創成 |
研削砥石(JIS R6210/6211/6212) |
砥粒や結合度を調整し、ドレッシングで再生 |
仕上げ面の微細化 |
微粒砥石や超砥粒ホイール |
粒度を細かくし、冷却・ドレスで高品位を実現 |
主な用途と使われる分野
研削砥石は
鉄鋼やステンレスだけでなく、
難削材(Ni基合金・Ti合金)や
セラミックスの加工にも広く利用されます。
製造プロセスにおいては
寸法仕上げ・輪郭形成・バリ取りなど、品質保証に直結する重要な役割を担います。
代表的な活用例:
円筒研削(SCM材):
一般砥石→ビトリファイドCBNに変更し、加工時間
90秒→60秒、ドレスインターバル
8本→480本。コストと自動化適性を改善。
CBN化による加工時間の比較

チタン平面研削:
GC砥石→NV砥石に変更し、除去効率
60%向上、ドレスインターバル
3倍。難削材でも安定した生産性を確保。
NV砥石化によるドレスインターバルの比較
研削砥石の種類と特徴
研削砥石には多様な種類があり、それぞれ
形状・結合剤・用途によって使い分けられます。
ここでは代表的な砥石を紹介しながら、特徴や使われる現場を整理します。
オフセット砥石・切断砥石・フラップディスクなど
オフセット砥石は、研削面が傾斜しており、バリ取りや溶接ビード除去に適します。
切断砥石は、金属やコンクリートを
高速で切り離すことを目的とした砥石で、幅が狭く消耗も早い反面、効率的に切断できます。
フラップディスクは、研磨布を放射状に配置した砥石で、
研削と仕上げを一度に行える利便性が特徴です。
種類 |
用途 | 特徴 |
オフセット砥石 |
バリ取り・溶接ビード除去 |
研削面が傾斜しており、接触が安定 |
切断砥石 |
金属・石材・コンクリートの切断 |
幅が狭く、切断効率に優れる |
フラップディスク |
研削+仕上げ(ステンレスや鉄) |
研磨布を重ねた構造で仕上げ性が高い |
CBN砥石・ダイヤモンド砥石と一般砥石の違い
一般砥石(酸化アルミナ・炭化ケイ素など)は価格が安く幅広い材質に対応できますが、
難削材や高精度加工には限界があります。
一方で、
CBN砥石や
ダイヤモンド砥石といった
超砥粒ホイールは、加工能率や寿命の面で大きな優位性を持っています。
CBN砥石:鉄系材料の高速加工に適し、ドレスインターバルが長い
ダイヤモンド砥石:超硬合金やセラミックスに必須、摩耗が少なく寿命が長い
一般砥石:安価で汎用性があるが、ドレス頻度が高い
用途別の選び方(金属・セラミックス・工具加工)
材質や目的に応じて砥石を選ぶことが、生産性とコスト最適化のカギです。
用途 |
推奨砥石 |
ポイント |
一般鋼材の研削 |
酸化アルミナ砥石 |
コストバランスに優れる |
アルミ・難削材 |
炭化ケイ素砥石 |
自生作用に優れ切れ味良好 |
超硬合金・セラミックス |
ダイヤモンド砥石 | 硬脆材の仕上げに必須 |
工具研削(ドリル・エンドミル) | CBN砥石/ダイヤモンド砥石 |
切れ刃精度と耐摩耗性が重要 |
砥粒の種類(酸化アルミナ・SiC・CBN・ダイヤモンド)
砥粒は研削性能を決める
切削刃の役割を担います。材質により硬さや耐摩耗性が異なり、適切な選択が重要です。
砥粒種類 |
特徴 |
主な用途 |
酸化アルミナ(A) |
汎用性が高く、鉄鋼材向け |
自動車部品、一般鋼材 |
炭化ケイ素(SiC) |
硬脆材に強いが脆性あり |
樹脂、アルミ |
CBN |
鉄系材料に最適、高硬度・長寿命 |
工具鋼、ベアリング鋼 |
ダイヤモンド |
最高硬度、非鉄・硬脆材向け |
超硬合金、セラミックス |
ワーク材質に合わない砥粒を選ぶと寿命が極端に短くなる
粒度・結合度・組織と加工精度への影響
砥粒の大きさや結合の強さ、気孔の多さは
加工面の粗さ・切れ味・寿命を左右します。
粒度(グリットサイズ):数値が小さいほど粗く削れ、大きいほど仕上げ向き
結合度:硬いほど切れ味が持続するが、自生作用が弱まり焼けやすい
組織(気孔率):気孔が多いほど冷却性・切りくず排出性が良いが、砥石強度は低下
粒度・結合度・組織の組み合わせが仕上げ精度と寿命を決める
結合剤の種類(ビトリファイド・レジノイドなど)
砥粒を固める
結合剤は、加工条件に応じて選択されます。
ビトリファイド結合剤:セラミック質で剛性が高く、形状保持に優れる。寸法精度が重要な加工に最適
レジノイド結合剤:樹脂系で弾性があり、切れ味が良い。高速切断やバリ取りに広く使用
ゴム結合剤:柔軟性があり、仕上げ研磨やポリッシュ用途に適する
研削砥石と使用機械の関係
研削砥石は、使用する
機械の種類や構造によって性能を大きく発揮したり制限されたりします。
ここでは代表的な研削盤と汎用グラインダー、さらに最新のCNCや自動化事例を紹介します。
平面研削盤・円筒研削盤・内面研削盤の特徴
-
平面研削盤:平らな面を高精度に仕上げる機械。ビトリファイド砥石の使用が多く、寸法精度や平坦度の要求に強い
-
円筒研削盤:円筒形状を加工。ベアリングやシャフトの仕上げに不可欠で、CBN砥石の導入で生産性向上が可能
-
内面研削盤:穴の内径を仕上げる。小径砥石を用いるため、振れ精度やバランス取りが重要
ディスクグラインダー・ハンドグラインダー・卓上グラインダー
これらは日常的に利用される
汎用工具で、研削砥石の用途も幅広いです。
ディスクグラインダー:最も一般的。切断砥石やオフセット砥石を取り付け、金属加工から建設現場まで幅広く使用
ハンドグラインダー:小型で取り回しがよく、バリ取りや細部の加工に便利
卓上グラインダー:工場や作業場に常設され、工具の刃先研磨など繰り返し作業に使用
小型グラインダーでは安全カバーと保護具の使用が必須
CNC研削盤や自動化システムでの活用事例
近年では
CNC制御や
自動化システムにより、研削砥石の可能性がさらに広がっています。
CNC研削盤:複雑な輪郭加工や連続運転が可能。
高精度センサーと組み合わせて寸法補正を自動で行う
自動ドレッシング装置:砥石の切れ味を一定に保ち、加工品質を安定させる
自動化ライン:ロボットアームや搬送システムと連携し、人手不足対策や生産性改善に寄与
研削砥石の選び方ガイド
研削砥石を正しく選定することは、
加工精度・コスト・安全性のすべてに直結します。
ここでは、規格・サイズ・ブランド・コストの観点から整理して解説します。
規格・サイズ・型番の見方
研削砥石には
JIS規格やISO規格が定められており、型番から
「砥粒・粒度・結合度・結合剤・形状・寸法」を読み取れます。
例:WA46P7V 1A 205D 19T 31.75H
WA:砥粒(白色アルミナ)
46:粒度(46番、粒径約355μm)
P:結合度(やや硬め)
7:組織番号(気孔率の目安)
V:結合剤(ビトリファイド)
1A:形状記号(平形砥石)
205D:外径205mm
19T:厚さ19mm
31.75H:内径31.75mm
「形状記号+呼び寸法」を読むことで、砥石の外観と取付可否がすぐに分かる
メーカー・ブランドの比較ポイント
研削砥石はメーカーごとに
品質・寿命・価格帯が異なります。
比較の際は以下の点を確認すると効果的です。
国内メーカー:JIS規格準拠、安定した品質、アフターサポートが手厚い
海外メーカー:ISO規格対応が多く、価格競争力に優れる場合あり
ブランド独自技術:各メーカー独自の結合剤や砥粒が寿命と精度を左右
単価だけでなく「寿命あたりのコスト」で比較することが重要
コスト最適化と長寿命化の考え方
砥石選びで重要なのは
加工条件に合った適切な選定です。
超砥粒砥石は自動化や高精度加工により大幅なコスト低減につながる場合がありますが、
一般砥石でもワーク材質や条件に合った組み合わせを選ぶことで十分にコストダウンは可能です。
一般砥石:低コストで入手可能。条件を最適化すれば長期的にも有効
CBN砥石:高価だが、自動化・高能率化において特に効果を発揮
ダイヤモンド砥石:非常に高価だが、硬脆材において必須で寿命が長い
「超砥粒=必ずコスト低減」ではなく、用途ごとに最適解を見極めるのが大切
研削砥石の操作と安全対策
研削砥石は高速回転するため、正しい操作と安全管理が不可欠です。
誤った取り扱いは
加工精度の低下だけでなく、
重大な事故につながる可能性があります。
ここでは交換・ドレッシング・安全確認の基本を解説します。
砥石交換の手順と注意点
砥石交換の際には、安全に砥石を使用することが可能かどうかの確認が重要です。
電源を切り、機械が完全に停止していることを確認
新しい砥石に
ひび・欠け・変形がないか点検
最高使用周速度(R6241規格)を超えないかラベル/検査票で確認
フランジ面を清掃し、砥石が
偏心せず正しく装着されているか確認
交換後は
3分間の無負荷運転を行い、異常振動や音がないかを確認
砥石交換は「点検 → 清掃 → 装着確認 → 無負荷運転」の流れを守ることが安全の基本
ドレッシング・バランス取りの方法
砥石は使用するにつれ目詰まりや摩耗が進行します。
ドレッシング(目立て)と
バランス取りを定期的に行うことで加工精度が安定します。
ドレッシング:ダイヤモンドドレッサを用いて砥石表面を整え、切れ味を回復
静的バランス:砥石をフランジに取り付け、重心の偏りを修正
動的バランス:高速回転時の振れを補正し、仕上げ面の品質を確保
加工面の精度(面粗さRa)や砥石寿命は、ドレッシングとバランス管理に大きく依存する
安全に使用するためのチェック項目
安全に使用するためには、日常点検が欠かせません。
以下は最低限の確認項目です。
防護カバー・火花受けが正しく装着されているか
作業者が
保護メガネ・防じんマスク・耳栓を着用しているか
作業開始前に
無負荷試運転(1分以上)を行い、異常音や振動がないか確認
「交換前点検」「ドレッシング」「3分以上の試運転」の3本柱で事故リスクを最小化
研削砥石に関するよくある質問(FAQ)
Grinding WheelとGrinding Stoneの違いは?
英語では「Grinding Wheel」と「Grinding Stone」が混同されることがあります。
-
Grinding Wheel:砥粒・結合剤・気孔の3要素で構成された
工業用砥石を指すことが多い
-
Grinding Stone:より日常的な
といし全般を指すことが多く、包丁研ぎや簡易研磨に使う石を含む
つまり、工業的な精密研削加工を意識する場合は「Grinding Wheel」が適切な表現です。
検索や海外メーカーとのやり取りでは「Grinding Wheel」を使うのが無難
研削砥石の寿命はどのくらい?
研削砥石の寿命は一概には言えず、
砥粒の種類・結合度・加工条件によって大きく変わります。
一般砥石(ビトリファイド、レジノイド):数時間〜数十時間程度
超砥粒ホイール:一般砥石の
10倍以上の寿命を持つケースもある
「加工できるワーク本数」や「ドレスインターバル」で寿命を評価するのが実務的
まとめ|最適な研削砥石(Grinding Wheel)選びで生産性を高める
品質と効率を両立する研削砥石
研削砥石は、
加工精度と生産効率を左右する最重要工具です。
ワーク材質や加工条件に合った砥石を選ぶことで、仕上げ面の品質を高めつつ、加工時間短縮やコスト削減を実現できます。
品質と効率を同時に高めるには「適材適所の砥石選定」が不可欠
最新技術動向と今後の研削砥石活用
近年では
CBNホイールやダイヤモンドホイールの活用が進み、
ドレスレス加工や自動化システムとの組み合わせにより生産性向上が加速しています。
さらに、IoTやセンシング技術の導入により、砥石の摩耗状態をリアルタイムに把握する取り組みも増えています。
「効率化 × 高精度 × 安全性」を同時に実現するのが今後の方向性
正しい選定と使用がもたらすメリット
砥石は
正しく選定・使用・管理することで、以下の大きなメリットをもたらします。 加工精度の安定化(寸法精度・面粗さ)
工具寿命の延長とランニングコストの低減
加工効率の向上と省人化・自動化の推進
作業者の安全性確保と事故リスク低減
研削砥石の最適活用は「品質・コスト・安全」のすべてを改善する最良の手段